心と体をゆるめる方法 ~作業療法士の視点から届けるセルフケア~

「肩こり」は体だけの問題じゃない?
「最近、肩がずっと重い」
「マッサージに行っても、その場しのぎでしかない」
「疲れがとれないまま、また朝がくる」
そんなふうに感じていませんか?
肩こりと聞くと、多くの人は「姿勢が悪いから」「運動不足だから」と、体の問題としてとらえがちです。
でも実は、心の状態も肩こりに大きく関わっています。
作業療法士として多くの人の「心と体」に向き合ってきた経験から、私はこう感じています。
肩こりは、“体からのSOS”であり、“心からのメッセージ”でもある。
本記事では、なぜストレスが肩こりにつながるのか、その理由とともに、
毎日を頑張るあなたが自分をゆるめるためのセルフケア方法を、わかりやすくご紹介していきます。
ストレスと肩こりの深いつながり
まずは、「ストレス」と「肩こり」がどうつながっているのかを、少し丁寧に見ていきましょう。
■ 筋肉は、心の影響を受けている
人はストレスを感じると、無意識のうちに筋肉を緊張させます。特に肩や首、背中の筋肉は、心の緊張に敏感に反応します。
こんな経験、ありませんか?
- 緊張しているときに肩に力が入っていた
- イライラしていたら歯を食いしばっていた
- 悲しいときに猫背になっていた
これは「気のせい」ではなく、心の状態が筋肉の緊張として表れている証拠です。
■ 自律神経が乱れると、血流が悪くなる
ストレスによって交感神経が優位な状態が続くと、筋肉への血流が低下し、回復しづらくなります。
本来、体はリラックスしているとき(副交感神経が優位なとき)に、血流が促進され、疲労物質も流れていきます。
しかし、ストレス状態が続くとこれがうまく働かず、肩こりが慢性化していくのです。
■ 「心の緊張」が「体の緊張」に変わる
これは私が関わったある方の話です。
小さなお子さんを育てるママさんで、毎日完璧にこなそうと頑張っていた彼女。
肩こりがひどく、眠れない日が続いていました。
ある日、思い切って「もう少し自分をゆるしてもいい」と言葉にした瞬間、彼女の表情がふっと和られました。
そして徐々に、肩こりの訴えも減っていったのです。
「肩の力を抜く」という言葉があるように、心がゆるむことで、肩もゆるむのです。
心と体をゆるめるセルフケア6選
では、具体的にどんなことをすれば「ゆるむ」ことができるのでしょうか?
作業療法士の視点から、心と体の両面にアプローチする方法をご紹介します。
1. 深呼吸で「今ここ」に戻る
ストレスがかかっているとき、人の呼吸は浅く・早くなっています。
まずは意識して、深く・ゆっくりと呼吸をしてみましょう。
【やり方】
- 鼻からゆっくり息を吸い(4秒)
- 口から長く吐く(6〜8秒)
- これを3〜5回ほど繰り返す
→ 呼吸が整うことで、副交感神経が優位になり、筋肉もゆるみやすくなります。
2. 「あたためる」ケアで血流アップ
肩まわりや首の後ろをあたためるのも効果的。
お風呂・蒸しタオル・温熱シートなどで血流を促しましょう。
【おすすめ】
- 寝る前に蒸しタオルを首に3分間
- お風呂で湯船につかりながら肩を回す
→ あたたかさは安心感にもつながり、心もほっとゆるみます。
3. 肩甲骨をやさしく動かすストレッチ
肩こり解消には、肩甲骨の動きがカギ。
【椅子に座ってできる簡単ストレッチ】
- 両肩をすくめるように上げる
- ゆっくり後ろに回すように下ろす
- 5〜10回繰り返す
→ ポイントは「大きく・ゆっくり・呼吸を止めないこと」。
4. 「書き出す」ことで心を整理する
頭の中がごちゃごちゃしていると、心はいつも緊張状態。
そんなときは、手を動かして思いを書き出すのがおすすめです。
【例】
- 今日の気づき
- 今の気持ち
- ありがとうと思えたこと
→ 手を動かすことで脳がリラックスし、自己対話の時間にもなります。
5. 1日1回、自分をねぎらう言葉をかける
「今日もよく頑張ったね」
「うまくいかない日もあるよ」
そんなひとことが、肩の荷をすっと軽くします。
自分に優しくできた日、肩も少しやわらかくなるかもしれません。
6. 「好きなこと」に触れる時間をつくる
音楽を聴く、アロマをたく、植物に水をあげる——
どんな小さなことでもいいので、自分の“好き”を思い出す時間をもってみてください。
→ これは脳にとって「安心・安全な時間」として働き、心の緊張をゆるめてくれる大切な時間です。
「ゆるむ」と、日常が少し優しくなる
ストレスによる肩こりは、「がんばっている証」でもあります。
でも、がんばり続けるだけでは、心も体もどこかで悲鳴をあげてしまう。
大切なのは、「ゆるめる」ことを自分に許すこと。
- 呼吸をととのえる
- 自分に優しい言葉をかける
- 小さな楽しみを思い出す
そんな時間が、あなたの心と体を少しずつ癒し、
「今日を乗り切ろう」と思える力に変わっていきます。
おわりに
この文章を読んでくださっているあなたが、もしかすると今、目一杯がんばっているかもしれません。
けれど、「ゆるめること」もまた、前に進むための大切な一歩です。
どうか、肩の力を抜いて。
ゆっくり深呼吸して。
今日のあなたに「おつかれさま」と声をかけてあげてくださいね。
免責事項
本記事は、作業療法士としての知見に基づき、一般的な健康情報やセルフケアのアイデアを紹介しています。
内容には十分配慮しておりますが、効果や体感には個人差があります。
つらい症状が続く場合や、体調に不安がある場合は、無理をせず医療機関などの専門家にご相談ください。
本記事の内容によって生じたトラブルや損害等については、責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
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