作業療法士(OT)として働き始めた最初の1年間は、正直なところ「こんなはずじゃなかった」と感じる場面の連続でした。
- 学校で学んだことと、現場で求められることのギャップ
- 思うように進まない患者さんとのコミュニケーション
- 先輩からのフィードバックの受け取り方
でも今振り返ると、そのつまずきがあったからこそ、OTとしての思考の軸ができたと感じています。
この記事では、私が実際に経験した「新人OTがつまずきやすいポイント」を3つ挙げ、それぞれどうやって乗り越えたかを正直にお伝えします。
OT学生や新人セラピストの方に、少しでも参考になれば嬉しいです。
つまずきポイント①:「評価はできるけど、何をすればいいかわからない」問題
学校で習ったことと現場のギャップ
OT養成校では、以下のようなさまざまな評価ツールを学びます。
- FIM(機能的自立度評価表)
- MMSE(認知機能検査)
- BRS(ブルンストローム・ステージ)
- ADLチェックリスト など
でも、いざ臨床の場に立つと…
💬 「評価の数字は出たけど、で、何をするの?」
という壁にぶつかります。
これは私だけではなく、多くの新人OTが最初に経験する「評価と介入をつなげられない」という問題です。
評価はあくまで現状を把握するためのツール。そこから「この患者さんにとっての作業目標は何か」「どの機能にアプローチすれば生活が変わるか」を考えるのが、OTの腕の見せどころなのですが、最初はその橋渡しができない。
私がやった乗り越え方
先輩OTのカルテを読み込むことが、一番の近道でした。
評価の数値だけでなく、「なぜこのアプローチを選んだか」という思考のプロセスが書かれているカルテは、教科書よりも何倍もリアルに学べます。
また、「この患者さんが一番困っていることは何か」を患者さん本人や家族に直接聞く習慣をつけると、介入の方向性がぐっと定まりやすくなりました。
💬 OTの視点は「機能の改善」より先に「その人の生活・作業」にある。これを体で覚えるプロセスでもあったと思います。
- 評価ツールは「現状把握」のためのもの。数字の先に介入がある
- 先輩のカルテから「なぜそのアプローチか」を読み解く
- 患者さん・家族に「一番困っていること」を直接聞く習慣をつける
つまずきポイント②:「患者さんとの関係づくりがうまくいかない」
リハビリを拒否される・打ち解けてもらえない
特に以下のような患者さんは、リハビリに積極的に参加してもらえないことがあります。
- 高齢で体力的に消耗している方
- 入院直後で精神的にも落ち込んでいる方
- もともと人見知りで、慣れるまで時間がかかる方
「また来たの?」「今日は疲れてるからいい」と言われると、新人の頃は正直かなり落ち込みました。
💬 「自分のコミュニケーションが悪いのか」「信頼されていないのか」と、毎回自分を責めていました。
気持ちが楽になった考え方の転換
あるとき、先輩からこんな言葉をもらいました。
💬 「患者さんがリハビリを断るのは、あなたへの拒否じゃなくて、今のしんどさの表れだよ」
スッと肩の力が抜けた瞬間でした。
それからは、関係づくりを「リハビリをしてもらうための手段」ではなく、「その人を理解するための時間」として考えるようになりました。
たとえ5分しか話せない日でも、こんな問いかけをするだけで、次第に関係が変わっていきます。
- 「今日は何が一番しんどいですか?」
- 「昔どんなお仕事されていたんですか?」
- 「家では何をするのが好きでしたか?」
OTが大切にしている「作業」の視点は、信頼関係づくりにもそのまま使えます。
その人の生活歴・習慣・好きなこと。そこに目を向けることが、ラポール形成の近道でした。
- 拒否は「あなたへの否定」ではなく「今のしんどさ」のサイン
- 関係づくりは「リハビリのための手段」ではなく「その人を知る時間」
- 生活歴・習慣・好きなことへの興味がラポール形成につながる
つまずきポイント③:「先輩の指摘がうまく受け取れない・活かせない」
フィードバックが怖くなってしまう時期
新人の頃は、先輩からの指摘がとにかく怖かった。
💬 「また何か言われるかも」「自分はOTに向いていないのかも」
フィードバックをもらうたびに自信を失っていた時期があります。
特に、指摘を受けた直後は頭が真っ白になって、何を言われたかすら覚えていないことも。
フィードバックを「資源」として使う方法
転機になったのは、指摘の内容をその場でメモするようにしたことです。
感情的に受け取ってしまうと記憶に残らないので、「とにかく書く」ことで、後から冷静に振り返れるようになりました。
さらに効果的だったのが、メモを取った後にこう自問することです。
- 「今日言われたことは、どの患者さんの場面に活かせるか?」
- 「なぜ先輩はそう言ったのか?」
- 「次に同じ場面が来たら、どう動くか?」
こうすることで、ただのダメ出しではなく、「自分のOTとしての引き出し」として蓄積されていく感覚がありました。
💬 先輩の言葉は、すべてをそのまま受け入れなくていい。でも「なぜそう言われたのか」を考えることは、臨床推論のトレーニングにもなります。
- フィードバックは感情が邪魔をする。まず「書く」ことで冷静に受け取れる
- 「どの場面に活かせるか」と自問することで、知識が定着する
- 先輩の言葉を「なぜ?」で掘り下げると、臨床推論の練習になる
まとめ:つまずきは「OTとしての基礎」になる
新人OTのつまずきは、大きく分けるとこの3つに集約されます。
| つまずき | 乗り越えのカギ |
|---|---|
| ①評価と介入をつなげられない | カルテ読み込み+患者・家族の声を聞く |
| ②患者さんと打ち解けられない | 「作業」の視点でその人自身に興味を持つ |
| ③フィードバックを活かせない | メモ習慣+「なぜ?」で自問する |
どれも、すぐに解決するものではありません。
でも、日々の臨床の中で「なぜ?」と問い続けることが、着実に自分のOTとしての力になっていきます。
最初の1〜2年は、うまくいかないことの方が多くて当たり前。
「つまずいてる自分はダメだ」じゃなくて、「今、何でつまずいているかがわかってきた」という視点に変えるだけで、ずいぶん気持ちが楽になると思います。
OT学生のみなさん、新人セラピストのみなさん、一緒に少しずつ成長していきましょう。
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この記事を書いたのは、作業療法士として病院・施設で10年以上働き、現在はフリーランスライターとして活動しているいろねです。
OTとしての現場経験をもとに、学生さんや現職の方に向けて役立つ情報を発信しています。



