「家でもそうなんですか?」と言われて
「〇〇くんって大人しいけど、家でもそうですか?」
長男が保育園の年少クラスのとき、先生から言われたひと言でした。
私はそのとき、ちょっと驚きました。
家では普通におしゃべりもするし、よくはしゃいで遊んでいる。
でも言われてみれば、確かに保育園での息子はあまり目立たず、騒いだり走り回ったりするタイプではありませんでした。
1人で黙々とブロック遊びをしていることが多く、周りの子がキャッキャと遊んでいる中でも静かに過ごしている様子。
「え?うちの子って、そんなにおとなしいの?」
先生の言葉をきっかけに、家での姿とのギャップが気になりはじめました。
“話したくない”じゃなくて、“話せない”かもしれない
それまでは「家で元気だから大丈夫」と思っていたけれど、
ふと、息子のある特徴に気づきました。
それは、「うまくいかないときに、言葉で伝えられないことが多い」こと。
何か思い通りにいかないとき、息子は「悲しい」「イヤだ」と言うのではなく、
「あー!!!」と大きな声を出したり、床をドンドン踏んだりして、癇癪のような反応を見せていました。
もしかして、自分の気持ちをどう言えばいいのかわからないのかも?
そんなふうに感じるようになったんです。
作業療法士として考える「自己表現が苦手な子」の背景
私は作業療法士として、子どもの発達や感覚の特性について学び、現場でも関わってきました。
そんな中で感じるのは、「自己表現が苦手な子」は、ただ口数が少ないだけではないということ。
- 言いたいことはあるけれど、言葉として出すスキルが未熟
- うまく言えなかったときの恥ずかしさや不安が強い
- 知らない感覚や状況を嫌がり、安全な遊びだけを選ぶ傾向もある
遊びの中でも、いろんな感覚や刺激、成功と失敗の体験が待っています。
でも、「どんな体験が待っているかわからない」こと自体が不安で、その世界に踏み出せない。
そういう子は、“おとなしい”のではなく、“慎重で、感覚的に敏感”な面があるのかもしれません。
「言葉を待たない」関わりに切り替えてみた
息子は、「気持ちを言葉にすること」が特に苦手な子でした。
よく「子どもの言葉を待ちましょう」と言われますが、息子の場合、待てば待つほど不安が強くなり、癇癪が悪化してしまうことが多くて。
そこで私は、「言葉を待つ」のではなく、「気持ちを一緒に探す」関わりに切り替えることにしました。
たとえば──
「今、悲しかったんだよね?ママにもっと遊んでほしかったのかな?」
「〇〇したかったのにできなくて、悔しかったよね」
というように、子どもの気持ちを代弁し、言葉にしてあげることで、
「これが“悲しい”なんだ」「こういうとき“くやしい”って言うんだ」と、感情と言葉が少しずつつながっていくように。
🃏 手作りした「感情カード」で見えてきた気持ち
そのサポートのひとつとして、私は感情カードを自作してみました。
「うれしい」「かなしい」「くやしい」「こわい」など、子どもの気持ちをイラストやシンプルな言葉で表したカードです。
息子に「どれに近い気持ちだった?」と聞くだけで、言葉にできない感情を選んで示すことができるようになりました。
📸:私が作った感情カードはこちら

「怒ってると思ってたけど、悲しかったんだ」
「くやしいのに、それがうまく言えなかったんだね」
言葉の練習ではなく、「気持ちに気づいてもらえた」経験そのものが、
息子にとって安心感になったのではないかと思います。
「未知への不安」には、親が“隣にいる”安心感を
また、新しい遊具や遊びを嫌がる場面でも、「無理にやらせる」のではなく、一緒にやってみるという姿勢を大切にしました。
たとえば──
- 滑り台を私が一緒にすべってみる
- ブランコに膝の上に乗せて乗ってみる
- 公園では静かに砂場で遊ぶだけの日があってもOKとする
「やったことがない=怖い」気持ちに共感しながら、少しずつ一緒に経験を広げていく。
この関わりが、息子にとっての「表現の一歩」になったと感じています。
まとめ|“おとなしい”の奥にある本当の声に気づくために
おとなしい=いい子。
そう思って安心していたけれど、その裏に「言葉にならない思い」があることを知った今回の経験。
子どもが表現しやすい環境や関わりを、大人がつくっていくこと。
それが、静かな子どもの“本当の声”を引き出す第一歩になると思います。
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