はじめに
作業療法の実習に入って最初に戸惑うのが「評価って、何をどうやればいいの?」という疑問です。学校で習ったことはあるけれど、実際の現場に出ると頭が真っ白になる…。そんな経験をした学生さん、多いのではないでしょうか。
私自身も、実習中に「とりあえずROM測ろう」「ADLの聞き取りしよう」くらいしか思いつかず、何をどう見ていいのか全然わからずに焦ったことがあります。
この記事では、実習中に「評価」に悩んだときのヒントを、初心者にもわかりやすく整理しました。今まさに悩んでいるあなたが、少しでも評価を身近に感じられるようになりますように。
第1章:そもそも「評価」って何?
まず確認したいのは、そもそも作業療法における「評価」とは何か、ということです。
評価とは、一言でいうと「その人のことを理解するための手がかりを集める作業」です。
医師が診断するために検査をするのと同じように、作業療法士は、その人がどんな生活をしていて、どこに困っていて、何ができて、何ができないのかを理解する必要があります。
評価はそのための第一歩です。
評価=テスト、評価=点数をつけること、というイメージを持っている人も多いのですが、本質は「その人を知る」ことです。
評価を丁寧に行うことで、その人に合ったアプローチを考えるための基盤ができます。
ただし、評価の方法はひとつではなく、対象者の状態や目的によってアプローチを変える必要があります。
その柔軟さがOTの難しさであり、やりがいでもあるのです。
第2章:実習で見るべき評価のポイント【3つだけ覚えよう】
評価にはたくさんの視点がありますが、実習中にいきなりすべてを把握するのは不可能です。
まずは以下の3つだけ覚えておけばOKです。
1. 身体機能の評価
・関節可動域(ROM) ・筋力(MMT) ・バランスや協調性など
基本中の基本ですが、実際に身体を触って「動きの癖」や「痛みのある部位」なども観察してみましょう。
観察中は、相手の反応も見逃さないようにしましょう。例えば「顔をしかめている」「ゆっくり動かしている」といった様子から、痛みや不安を感じている可能性があります。
2. 日常生活動作(ADL)の評価
・食事、着替え、排泄、整容、入浴など ・どこを手伝っているか、どこが自立しているか
可能であれば実際の動作を見せてもらったり、介助場面を観察させてもらうのがベストです。動作を見るときには「スムーズさ」「安全性」「必要な時間」に注目しましょう。
3. 作業の評価
・趣味、役割、仕事など、その人にとって意味のある活動 ・過去の活動歴や今後やりたいことの聞き取り
「作業」に注目するのがOTの特徴。ちょっと難しく感じるかもしれませんが、「どんな暮らしをしている人なのか」を意識すると見えてきます。
人によっては、「趣味は特にない」と話されることもあります。
そんなときは「以前よくやっていたこと」「最近やっていないけど気になっていること」を聞き出すのがポイントです。
第3章:何をどう“見たらいいか”わからないときのヒント
「評価してください」と言われても、どこから手をつけていいかわからない…。そんなときは、次の3つを意識してみてください。
1. まず観察する
動作をじっと見る、会話の雰囲気を見る、表情や疲れ具合を見る。それだけでも立派な評価です。
観察は「情報収集」の第一歩。意識して見ていると、ほんの小さな動きや表情の変化にも気づけるようになります。
2. 「できること」と「困っていること」に注目する
全部を見ようとせず、「この人は何ができて、どこに手助けが必要か」という視点を持つと、評価の目的が明確になります。
例:「右手が使いにくいけれど、左手だけで工夫して食事をしている」など、努力や工夫の様子に注目してみましょう。
3. 指導者に聞いていい
「何から見たらいいかわからないです」と素直に相談することも大切です。自分なりに考えたうえで聞けば、ちゃんと伝わります。
評価の視点やコツは、実際のOTから教わるのが一番の近道です。恥ずかしがらずに、どんどん吸収していきましょう。
第4章:よくある実習生の失敗とその対処法
1. チェックリストの穴埋めになってしまう
評価票をただ埋めることが目的になってしまうと、本来の「相手を理解する」という視点が抜けてしまいます。
→チェック項目は“確認の道具”であって、“評価そのもの”ではないと意識しましょう。
2. 評価を一度きりで終わらせてしまう
最初に評価しただけで「終わった」と思ってしまう人がいますが、評価は繰り返し行うものです。
→「昨日と今日で変化があるか」「前よりできるようになったか」など、経過を見る視点を持つことが大切です。
記録や観察を重ねる中で、「できること」が増えていく姿に気づけると、OTのやりがいを実感できます。
3. 完璧にやろうとして動けなくなる
全部正確にやらなきゃ…と思いすぎると、結局何もできなくなります。
→“一部だけでも丁寧に見よう”というスタンスでOK。部分的な気づきでも、評価の一歩です。
完璧を目指すより、「まずやってみる」ことが成長の第一歩です。失敗から学べることは、想像以上に多いですよ。
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おわりに
評価は、ただの作業ではなく「その人らしい生活を支えるための入り口」です。学校の授業では学びきれない“現場のリアル”に触れるのが実習。その中で、評価はあなた自身が一番成長できるチャンスかもしれません。
うまくできない、見方がわからない。そんなときも、自分を責める必要はありません。
私も実習中はたくさん失敗しました。でも、その経験が今の自分の土台になっています。
焦らなくていい。迷いながらでいい。患者さんと向き合おうとするその姿勢こそが、作業療法士としての大事な一歩です。
この記事が、評価に悩むあなたの背中を少しでも押せたならうれしいです。