SOAP記録のA(評価)が書けない…|作業療法士が教えるアセスメントの書き方と3ステップ思考法

SOAP記録のA(評価)が書けない…|作業療法士が教えるアセスメントの書き方と3ステップ思考法 カラダと心

「S・Oは書けるのに、Aだけ手が止まる…」
「毎回”継続”か”変化なし”しか書けない」

作業療法の実習や新人時代、SOAP記録のA(評価)につまずく人はとても多いです。

でも、Aが書けないのはあなたの思考力が足りないからじゃありません。
「Aに何を書くべきか」が整理されていないだけです。

この記事では、Aが書けない原因と、臨床思考を言葉にするための具体的なコツを解説します。
一緒に学んでいきましょう。


第1章:なぜAだけ書けないのか?

SOAPのうち、S(主観)とO(客観)は「起きた事実」を書くだけなので、比較的書きやすいと感じる人が多いです。

一方でA(評価)は、「自分の頭で考えたことを、専門家として言語化する」という作業が必要になります。これが難しい理由は主に3つあります。

  • 「自分の意見を書いていいのか」という不安:学生や新人は「間違えたら怖い」という気持ちから、書くのをためらいがちです
  • 何を根拠にすればいいかわからない:S・Oとの結びつけ方がピンとこない
  • テンプレに頼りすぎている:「継続」「変化なし」で済ませてしまうクセがついている
👩‍⚕️
いろね(OT歴11年)
Aは「正解を書く欄」ではなく、「S・Oをもとに今のセラピストの解釈を書く欄」です。
完璧に書こうと思わなくても大丈夫ですよ。
まず自分の言葉で書いてみることが大切です。

第2章:AはS・Oの”答え合わせ”じゃない|よくある誤解

Aを書くときに多いのが、「S・Oに書いたことをまとめただけ」になってしまうパターンです。

🙋
学生・新人OT
S・Oの内容をまとめてAに書けばいいんじゃないの?
👩‍⚕️
いろね(OT歴11年)
それはよくある誤解!
Aは要約じゃなくて「臨床的な意味づけ」を書く欄です。
「何が起きたか(事実)」じゃなくて「それはどういう意味か(解釈)」を書くのがポイントです。

具体的に見てみましょう。

S:「今日は体がだるい気がする」

O:歩行訓練中に2回ふらつきあり

❌ NGのA
ふらつきがあり、体のだるさを訴えている。
→ これはS・Oの要約にすぎません
✅ OKのA
昨日との比較でバランス能力の低下が示唆される。倦怠感との関連も考えられ、疲労の蓄積または体調変化の可能性あり。

📖 SOAPの基本からおさらいしたい方はこちら
【もう迷わない!】SOAPでスッキリ書ける作業療法の記録のコツ


第3章:Aを書くための3ステップ思考法

「解釈といってもどうすれば…」という方のために、Aを書く前に使える思考の流れを3ステップで整理しました。

SOAPのA評価 3ステップ思考法の図解 S・O・A・Pの流れと、Aを書くための3ステップを図解したもの Aを書くための3ステップ思考法 S 主観的情報 患者の言葉 O 客観的情報 観察・測定値 A 評価・解釈 臨床的な意味づけ ← ここが難しい! P 計画 次の一手 STEP 1 変化を探す 前回と比べて 何が変わった? 例:FIM 4→5に向上 変化・不変を確認する STEP 2 なぜ?を考える 変化の原因を 自分なりに仮説立て 例:筋緊張が緩和 されてきたのでは? STEP 3 ← A完成! 今の状態を一言で 専門的な言葉で 今の状態をまとめる 例:ADL動作の習熟が 進み自立度が向上中 これがAの核心!
STEP 1
S・Oを並べて「変化」を探す

前回と比べて何が変わった?変わっていない?まず変化・不変を確認します。

例:「前回FIM4だったのが今日は5になった」→ 向上している

STEP 2
「なぜ?」を1回考える

その変化(または不変)はなぜ起きたか、自分なりの仮説を立てます。
専門書どおりじゃなくていい。
「たぶん〇〇が原因では」という考えを持つことが大事です。

例:「訓練を続けたことで筋緊張が緩和されてきたのでは」

STEP 3
「今の状態を一言で言うと?」を書く

STEP1・2を踏まえて「今この患者さんはどういう状態か」を専門的な言葉でまとめます。これがAの核心です。

例:「ADL動作の習熟が進み、自立度が段階的に向上している状態」

🟡 慣れてきたら意識したいこと
・目標(ゴール)との照合:今の状態はゴールに向かっているか?
・リスクの視点:このまま進めていいか、注意すべきことはないか?

📖 評価の視点をもっと詳しく知りたい方はこちら
作業療法実習で評価がわからない学生さんへ|現場で役立つ”見るべきポイント”まとめ


第4章:具体例で学ぶ|ビフォーアフター

ケース1:高齢者のADL訓練

S:「昨日より腕が動かしやすいです」

O:上衣更衣動作のFIM点数が4→5へ向上

❌ NGのA
FIMが向上し、本人も動かしやすいと言っている。
✅ OKのA
筋緊張の緩和と反復練習による習熟の効果と考えられる。ADL動作は段階的に向上しており、現在の訓練アプローチは有効と判断。
👩‍⚕️
いろね(OT歴11年)
「なぜFIMが上がったのか」の仮説を入れるだけで、グッとAらしくなります。
ぜひ意識してみてください。

ケース2:脳血管疾患後の片麻痺

S:「手が思うように動かない」

O:物品把持時に手指屈曲が不十分、動作に時間を要する

❌ NGのA
手指の動きが悪く、本人も困っている。
✅ OKのA
巧緻性の低下が継続しており、動作への自己効力感も低下している可能性あり。機能回復とともに「できた体験」の積み重ねが必要な段階と考える。

📖 片麻痺のADLアプローチをもっと詳しく知りたい方はこちら
【OT的思考を公開】片麻痺の高齢者へのADLアプローチ|セラピストの頭の中をのぞいてみよう

ケース3:実習生のビフォーアフター

S:「前よりも上手くできた気がします」

O:立位保持15分可能、転倒なし、集中力良好

❌ NGのA
立位保持ができており、本人も自信がついてきている。
✅ OKのA
立位の安定性が向上し、作業への集中が維持できるようになっている。自己効力感の高まりも見られ、次段階への移行を検討できる状態にある。

第5章:「継続」「変化なし」しか書けないときの脱出法

毎回同じAになってしまうのは、「変化がない=書くことがない」と思っているからかもしれません。でも実際には、変化がないこと自体にも意味があります。

  • 変化がない場合:「なぜ変化が起きていないのか」を考えてみる
    例:「訓練量は十分だが、疼痛による意欲低下が影響している可能性がある」
  • 「継続」しか書けない場合:「今の訓練を継続することが適切な理由」を1行添えるだけでAになる
    例:「現在の訓練強度は適切と判断。段階的な向上が見込まれるため、現プログラムを継続する」
🙋
学生・新人OT
変化がないとき、本当に何を書けばいいかわからなくて困ってた…
👩‍⚕️
いろね(OT歴11年)
変化がない=書くことがない、じゃないんです。
「なぜ変化しないのか」「このまま継続してよい根拠は何か」を書くのがA。
行き詰まったらこの3問を自分に聞いてみて。
🟡 行き詰まったときの質問リスト
・今日のS・Oから「気になること」はあったか?
・先週と比べて何かひとつでも違うことはあったか?
・もし自分が担当OTなら、次に何をしたいと思うか?

この3問に答えるだけで、Aのヒントが出てきます。

第6章:まとめ|Aが書けるとPも変わる

Aがしっかり書けるようになると、自然とP(計画)の質も上がります。
「なんとなく継続」ではなく「この理由でこの訓練を選ぶ」という臨床判断ができるようになるからです。

最初はうまく書けなくて当然。
3ステップ思考法を使いながら、少しずつ自分の言葉で書く練習を続けてみてください。
書けば書くほど、あなたの臨床思考は確実に育っていきます。

🔹 この記事のまとめ
・AはS・Oの要約ではなく「臨床的な解釈」を書く欄
・3ステップ(変化を探す→なぜ?→今の状態を一言で)で考えると書きやすくなる
・「変化なし」「継続」でも、理由を1行添えるだけでAになる
・Aが書けるとPの質も上がり、臨床判断力が磨かれていく